苦悩の大きさだけは文豪並み

なけなしの文才の無駄遣い。

饒舌にする食べ物

The Other Side of the Curry

「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」 スタンリー・キューブリック監督が映画化した『2001年宇宙の旅』の原作者であり、SF界のビッグ・スリーとも呼ばれる、アーサー・C・クラークが『未来のプロフィル』の中で言及した「クラークの三法則」…

The Doomsday Curry

世間の狂騒に、杜甫でなくても「国破れて山河在り」と嘆きたくなる日々。杜甫ほどの才があれば、あのような素晴らしい詩が出来上がるのだが、才を持たない人間はただただ溜め息を漏らすしかない。そして困ったことに、溜め息ばかりついていると、妙にお腹が…

Close Encounters of saury

唐の詩人の于武陵(とそれを翻訳した井伏鱒二)は「さよならだけが人生だ」と言っている。人が生きる上で、別れは避けられないものであり、人生の終着点である「死」を迎えた時には、この世界とお別れすることになる。とはいえ、「さよなら」ばかりが人生では…

A Curry Paradise Syndrome

今年は1993年以来の冷夏になると、夏が始まる前に聞いた。だが蓋を開けてみると、殊更暑かった去年と同じぐらいの暑さの日々が続いている。「夏はやっぱりカレー」という風潮もあるが、わたしはこれに断固として反対するものである。暑かろうが、寒かろうが…

The Curry on the Edge of Forever

「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も寝られず」という、ペリーが来航した際の世の慌てぶりを鋭く描写した狂歌がある。さして泰平でない人生でも週の初めは頭がぼんやりしがちだ。そんな頭をたった一杯で覚ますカレーがある。しとしとと雨が降る中を…

The Only Meat Thing to Do

カレーに入れるのは牛肉か、豚肉か。この問題については議論が尽きないが、概ね関ヶ原を境に西が牛肉勢力圏、東が豚肉勢力圏とすることができるそうだ。仮に牛肉か豚肉かどちらかしか使ってはいけないというルールを作った日には、「まっぺんやったろみゃあ…

Mr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love Spice

愛知県ではあるが、ほぼ岐阜県と言って差し支えないあたりに住んでいると、三河は未知の世界である。殊に東三河は地の果てであると考えていたほどだ。しかし、人間は楽園を追われて、この世にやってきたのではなかったろうか。つまり、我々が追われた道を逆…

2019: A Spice Odyssey

「カレーは辛え」という駄洒落がある。言えば「季節外れの寒さですね」とか「氷河期にはまだ早いですよ」などのリアクションが返ってくるレベルのものである。しかし、この言い回しは駄洒落であると同時に、事実を端的に言い表したものでもある。つまり、カ…

Hamburg insanity

ドアをくぐると、そこは…という書き出しを思い浮かべながら、ドアを押してみたところ、開かなかった。しばらくドアの前で四苦八苦していると、見かねた店員さんが中からドアを開けてくれた。 出鼻を挫かれて入店したのは、ハンバーグの店だ。そしてわたしは…

カロリーに寄す

空腹に耐えかねて扉をくぐると、そこはカロリーの楽園だった。しかし、本当に楽園なのか。そこかしこに餓えたサラリーマンがひしめきあっている。その様子はさながら地獄のようだ。楽園とは地獄なのか。答えは否である。地獄に救いはないが、この店には救い…

もの凄い鯖

海に面した県の、海から遠く遠く離れた場所に住んでいるので、海を見るだけでやたらとはしゃぎたくなる。しかし、海の魚を食べるということになると、てんで心が躍らず、「肉ではないのか」とがっかりすることさえあった。そんな過去の自分を張り倒したくな…

Hamburg! Hamburg! Hamburg!

ハンバーグの肉はどうあるべきかということを考えるとき、まず思い浮かぶのは、粗挽きの牛肉である。炭火で焼いた大ぶりのハンバーグを、熱々の鉄板の上で割って食べるのはたまらない。では、豚肉であったらどうだろうか?合挽きなどではなく、100%の豚肉で…

My most favorite Tonkatsu!

とんかつが届く前から、その戦いは始まっている。 与えられたソースは5種類。シンプルな塩、王道のとんかつソース、こだわりの詰まったオリジナルソース、さっぱり系の梅酢ソース、名古屋人の魂味噌だれ。対してソース皿は3種類分。この中からどれを選ぶかに…