苦悩の大きさだけは文豪並み

なけなしの文才の無駄遣い。

2020-01-01から1年間の記事一覧

NGY大学不思議譚⑤ガーになった男

6月上旬。梅雨入り前だというのに、連日雨が降り続けている。そんな憂鬱を振り払うように、学生たちは皆、うきうきとしている。今週末にはN大祭があるのだ。サークルにも部活にも属していない人間からすると、特にうきうきとする理由もなく、むしろ浮ついた…

新世界まで

終わりの始まりは、とある国の地方都市での肺炎の流行だった。 風邪や季節性のインフルエンザが流行するにはまだ早い9月の下旬、その都市では、原因不明の蕁麻疹が流行し、100人近くが亡くなった。この異常事態に政府は調査を開始し、この蕁麻疹が未知のウィ…

Crocodile Dandyism

学生時代、指導教官に「頑張らないというのが君なりのダンディズムなんだろうね」と言われたことがある。当時の私は、今以上に怠惰な人間で、その言葉の真意を理解しようとすることさえ面倒がる人間だった。あれから10年以上経ってわかったのは、自分自身に…

The Doomsday Curry

世間の狂騒に、杜甫でなくても「国破れて山河在り」と嘆きたくなる日々。杜甫ほどの才があれば、あのような素晴らしい詩が出来上がるのだが、才を持たない人間はただただ溜め息を漏らすしかない。そして困ったことに、溜め息ばかりついていると、妙にお腹が…

The Curry Fountains of Paradise

「目には青葉山ほととぎす初鰹」と詠んだのは、江戸時代の俳人、山口素堂である。鰹といえば、初夏の魚で、特に初鰹といえば人々の憧れの的であった。早足で過ぎる季節にすっかり疲弊してしまった金曜の昼休み、癒やしと刺激を求めて駆け込んだカレー屋のメ…